ゆーきまたたき

オフィス写真部 佑木瞬の写日記

アネモネ。

考え事したときとか、自分にとって大事なときに時間をつくって観るようにしてる映画がいくつかあって。
今日は『ホテル・ビーナス』を観てたりした。




ホテル ビーナス [DVD]

ホテル ビーナス [DVD]




一年ぶりくらいかな。
相変わらずすきなセリフのとこは変わらないな。



星が減った。別に星の数は変わっていないのに。

遠くを見ているつもりでもね。みんな不安だからさ。
すぐ自分の近くを照らしたがる。
でも、自分の近くを明るくしてくと、遠くの星がどんどん見えなくなってく。
あるのに見えなくなっちまう。
そのうち目印にしてた星も見失っちまう。


そういえば2年くらい前になるけど、学校の授業でこの映画のレビューを書いたなーとおもって引っ張り出してみました。
よくとってあったね。笑
当時の自分への課題は『客観的に物事を伝えられる文章も書けるようになること』とかだったと思うのでいま読むとちょっとかたい印象。
でもせっかくなので、自分が手がけたものはこれからも載せていこうかな。魅せて、なんぼなのでね。





ホテル・ビーナス

最果ての街でしずかに営業するビーナス・カフェ。
メニューはビーナスブレンドだけ。
その背中に存在するのは北に北に流れ着いた訳ありな人たちがひそむ場所、ホテルビーナス
物語の舞台はここ。それぞれの部屋の住人が心に傷を抱えながら生活している。
本当の名前さえ隠して、ひっそりと。親子連れのガイとサイが入ってきたことで、ビーナスには新しい風が吹き始めた。

この映画の最大の特徴は、邦画でありながら全編韓国語なこと。
キャストには韓国人も出演しているが、主演の草磲剛(チョナン)をはじめとして市川正親(ビーナス)、香川照之(ドクター)中谷美紀(ワイフ)らは見事に韓国語で役を演じきっている。もちろん吹き替えはない。邦画を観にいくのも出演しているのも日本人なのに日本語の字幕を読むのは不思議な感覚。韓国語独特のイントネーションとあたたかみが、言葉としての意味は理解できなくても音として伝わってくる。気持ちを受け取り台詞を読ませる映画だ。

ウラジオストクの街並、淡いブルーフィルム、タップダンス、ラブサイケデリコの歌声。そんな要素から創りあげられた無国籍感と退廃した空気。
最初は独自の世界観に新鮮さを感じるが、その特徴的な面白さだけでは終わらない脚本。絶妙なバランスで保たれている。監督は「チョナン・カン」「スマステーション」ディレクターのタカハタ秀太。本作品が映画初作品になる。

ホテルビーナスで私が惹かれたのは結論を求めないというところだろう。
希望と絶望、愛と憎しみ、生と死、強さと弱さ。その境界線はひどく細くて目に見えないこと。モノクロの白と黒の間に無数のグレーが存在するように、世界もまた、きっぱりと分類出来ないことのほうが多いことを彼らは知っている。
この映画で涙する人は多いが決して泣き場を作っている映画ではない。住人達が序所に明かしていくイタミに共鳴し、気づいたら視界が歪んでいた。
おしつけではなく励ます訳でもなく、そっと肩に手を置いてくれるような優しさ。
それはまるで一杯の珈琲のようで、世界が青く見えてきたら、ビーナスカフェに行きたいと思ったりする。






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佑木瞬